八木信行先生の本に、チャクラとママノの取り組みが載りました
八木信行先生から、チャクラのことが載った本をいただきました。
2026年にSpringer(シュプリンガー)から出た英語の学術書『Sustainable Management of Agricultural Traditional Systems』です。世界農業遺産のような昔からの農業を、時代に合わせて少しずつ変えながら守っていくための本で、八木先生は4人いる編者のひとりです。
八木先生は東京大学の特命教授で、2019年から2023年までは、FAO(国連食糧農業機関)の世界農業遺産(GIAHS)プログラムで科学アドバイザリー会合の委員を務めていました。その八木先生が書いた第2章に、エクアドル・アマゾンのチャクラと、ママノの現地での取り組みが写真つきで載っています。
第2章は世界農業遺産の4地域を比較
第2章の題は「Dynamic Conservation of Traditional Agroecosystems」で、日本語にすると「伝統的な農業生態系の動的な保全」です。17〜30ページに、世界農業遺産に認定された4つの地域が取り上げられています。そのひとつが、2023年に認定されたエクアドル・ナポ県の「アマゾン・チャクラ」です。
チャクラは、カカオ、コーヒー、グアユサ、バニラ、キャッサバなどを森の中で一緒に育てる、家族の農園です。でこぼこの土地に木がぎっしり植わっているので、機械は入れません。カカオの実も、ひとつずつ手で採っています。
3つの組合で、生産者は2,210人
本では、ナポ県でカカオの輸出に取り組む組合として、カヤリ(1,122人)、ウィニャック(909人)、ツァツァヤク(179人)の3つが紹介されています。
僕たちが一緒に仕事をしているウィニャック組合は、生産者の98%がキチュア族の家族で、65%が女性です。
ママノのことも書いてもらいました
本の中で、日本の輸出先としてママノの名前が出てきます。書かれているのは、こんなことです。
- 現地の組合から、カカオを長く、定期的に買い続けていること
- チャクラのことを日本のお客さまに伝え、日本の好みを現地の生産者に伝えていること
- 日本で売っているチョコレートを、ナポ県の生産者に食べてもらう試食会を開いていること
- ウィニャック組合と一緒にカカオを植えたり、日本のショコラティエが現地を訪ねたりしていること
載っている写真は、どれも2024年に八木先生が現地で撮ったものです。
植樹は、バニラビーンズとの「みんなで育てるカカオの森プロジェクト」
ウィニャック組合でのカカオの植樹は、横浜のチョコレートブランドVANILLABEANS(バニラビーンズ/チョコレートデザイン株式会社)と一緒に進めている「みんなで育てるカカオの森プロジェクト」です。現地では「Mi Primera Chakra(私の初めてのチャクラ)」と呼ばれていて、2024年に始まりました。
役割は3つに分けています。
- バニラビーンズ:資金を出し、収穫したカカオをチョコレートにする
- ウィニャック組合:苗づくり、研修、計測を現地で行う
- ママノ:現地のコーディネートを担当する
参加しているのは、17〜27歳のキチュア族の若者31名で、そのうち22名が女性です。親から譲り受けた0.5ヘクタールの土地に1人313本のカカオを植えて、初めて自分のチャクラを持ちます。育ったカカオをどこに売るかは、植える前に覚書で決めました。2024年8月から2026年9月までに配った苗は15,903本です。
費用は、バニラビーンズのプロジェクト対象商品の売上の一部でまかなっています。対象商品を買うと、その一部が苗や研修の費用になります。若者のチャクラで育ったカカオは、またバニラビーンズのチョコレートになります。
八木先生も、2024年5月21日の開始式に参加して、第1期のジミーさんのチャクラで苗を植えました。プロジェクトの詳しい記録は「みんなで育てるカカオの森プロジェクト」のページにまとめています。
作る人を知ると、チョコレートの価値が変わる
八木先生は、こうしたつながりを「関係価値(relational value)」という言葉で説明しています。遠い国でとれたカカオは、日本ではただの「商品」として見られがちです。でも作っている人の顔が浮かぶと、同じものでもより大切に感じて、高く評価するようになる、という考え方です。
チャクラはいろいろな作物を一緒に育てるので、たくさんはとれません。とれる量が少ない分、1kgあたりの値段を上げる必要があります。そのために輸出の道をつくることや、食べる人とのつながりをつくることは、昔ながらの農法を守ることにもつながる、と八木先生はまとめています。
八木先生には、2023年にもチャクラと世界農業遺産についてお話を伺いました。
書誌情報
- García-Álvarez-Coque, J.-M., Yagi, N., Puzzo, C. M., Roig-Tierno, N. (Eds.) (2026). Sustainable Management of Agricultural Traditional Systems: Guidelines for a Dynamic Conservation and Governance of Heritage Agriculture. Springer. https://doi.org/10.1007/978-3-032-19000-0
- Yagi, N. (2026). Dynamic Conservation of Traditional Agroecosystems. 同書 pp.17–30. https://doi.org/10.1007/978-3-032-19000-0_2