エクアドルのアマゾンチャクラへ。みんなで育てるカカオの森プロジェクト、そして5,500年前のカカオの足跡を辿る旅。
FROM ECUADOR / MAY 2025
2025年5月、エクアドルへ。みんなで育てるカカオの森プロジェクト、そして5,500年前のカカオの足跡を辿る旅。
ママノ江沢です。5月のエクアドル訪問記をお届けします!今回のエクアドル渡航には2つの目的がありました。一つは、横浜のVANILLA BEANSと取り組む「みんなで育てるカカオの森プロジェクト」の植樹式開催とチャクラの訪問。そしてもう一つは、カカオの歴史的な証拠が眠る遺跡「サンタアナ・ラ・フロリダ」の訪問です。
About the Project
みんなで育てるカカオの森プロジェクトとは
エクアドル・ナポ州の先住民キチュア族の若者農家(17〜27歳)が、初めて自分のチャクラ(伝統的なアグロフォレストリー農園)を持ち、カカオを育てるプロジェクトです。現地では「Mi Primera Chakra(私の初めてのチャクラ)」というテーマで取り組まれています。
これまで若者農家たちは家族の手伝いとしてカカオ栽培に関わることはあっても、自分の農園を持つ機会はありませんでした。このプロジェクトでは一人あたり0.5ヘクタールの土地で、カカオを中心としたチャクラを自分の手で始めることができます。
2024
10名・3,000本の植樹
2025
21名・9,300本の植樹
2026
31名・6,200本の追加植樹予定
今回の視察には、広島大学名誉教授の佐藤教授(著書:チョコレートを極める12章)、広島大学の上野教授(著書:チョコレートはなぜ美味しいのか)、そして「お菓子「こつ」の科学」の著者として知られる河田昌子博士も途中まで同行。遺跡を発見したバルデス教授やINIAP(エクアドル国立農業研究所)のハメス博士らと、カカオの歴史・品種・最新研究について幅広く議論を重ねた旅でもありました。
日程レポート
5月7日(水)深夜 キトへ到着
現地時間24時頃、エクアドル・キト空港に到着。約22時間のフライトの疲れはありながらも、深夜0時半頃に税関を通過。空港からタクシーで約15分のホテルに着き、そのまま就寝。
キト空港 / 深夜到着
5月8日(木) キト市内チョコレート店視察とロハへの移動
朝からキト市内へ。市街地を一望できるパネシージョの丘でまず記念撮影。その後、市内のチョコレートショップ「Yumbos Chocolate」でテイスティング体験。「ナポ州とサモラ・チンチペ州はエクアドルのカカオの原産地」という話を改めて聞き、エクアドルでもこの2つの地域がカカオのオリジンとして認識されていることを確認できました。
続けてRaqueri Chocolateにも立ち寄ると、偶然にも5,500年前の土器が置いてありました。「購入できますか?」とメンバーが質問してみたところ販売可!とのことで購入でき、ママノでも1点入手。これは店舗に置くことになりました。
午後はキト発のフライトで移動。カタマヨ空港で現地の案内人と合流し、そこからガタガタと揺れる山道を車で4〜5時間かけて移動。かなりの疲労でしたが、翌日以降の現地訪問への期待も高まりました。
パネシージョの丘
Yumbos Chocolate
5,500年前の土器(模倣品)
5月9日(金) サンタアナ・ラ・フロリダ遺跡訪問と野生カカオ試食
サモラ・チンチペ州 / サンタアナ・ラ・フロリダ遺跡
この日のメインは、サモラ・チンチペ州にある遺跡「サンタアナ・ラ・フロリダ」の訪問。5,500年前に人類がカカオを栽培・食用にしていた証拠が見つかった、歴史的な場所です。
その地に実際に立ち、5,500年前かそれよりもっと以前から、この場所で人間の営みがあったことを、肌で感じることができました。感動的な体験でした。
古代の人々は、宇宙の流れや銀河の動き、地球の自転、エルニーニョ・ラニーニャといった天候の変化、春分・秋分・夏至・冬至の4つの季節の変わり目、そういったものをすべて把握しながら農業を行い、シャーマンが地域を導いていたのだということが、遺跡の形そのもの、墓や神殿、人が住む区画が螺旋状に配置され、それぞれに意味を持たせられていること、から伝わってきます。
Column / カカオの歴史的背景
ナポ州とサモラ・チンチペ州は、最終氷河期にもアマゾンが残った地域の一つとして知られています。カカオという植物は1,100万年前から存在すると言われており、この地域はカカオの植物学的なオリジンである可能性も高く、遺伝子分析をするとその多様性が際立って豊富です。
5,500年前にこの地で食べられていたカカオがどの品種だったのか。遺跡が示すのは、アマゾン奥地と沿岸地域との間にすでに活発な交易があったこと。沿岸から貝殻が持ち込まれたのと同じように、アマゾンからカカオが沿岸へ渡り、それがナショナル種として広がっていったのではないかと考えられています。
考古学的な事実とカカオの品種学が重なり合うこの場所は、好奇心をかき立てられる場所でした。もっともっと勉強したいという気持ちが強くなりました。
またこの日、パランダ周辺の農園でカカオの品種を試食。ナショナルの遺伝子が90%以上でありながら外観が100%ホワイトカカオである野生カカオをその場で割って食べる機会もあり、改めてこの地域の遺伝的多様性を実感しました。
滞在中にはINIAPの研究者(ハメス・キロス博士、サウル博士)による約3時間のプレゼンテーションも行われ、フランシスコ・バルデス博士が通訳も担当してくださいました。グローバルな知識交流でした。
テオブロミンとカフェインの比率による品種特性の識別、サモラ・チンチペ州内の約300本のカカオの遺伝子分析の結果(ナショナル系とアマゾニコ系への分類)、1920年代からのエクアドルの品種改良の歴史と今後の展望など、幅広い知識を得ることができた機会でした。
サンタアナ・ラ・フロリダ遺跡
ホワイトカカオの試食
ハメス博士らとの意見交換
5月10日(土) サモラ・チンチペ州を大移動
パランダからロハを経由し、サモラ・チンチペ州内を車で5時間ほど移動。かなりの標高まで上がる行程で、体力的には大変でしたが山の景色は絶景。アソプロマス組合が加盟管理する農園では、EET-95、EET-96、EET-103、スペルアルボの品種を確認。「メンテナンスの徹底が収穫量に直結する」という話を改めて確認しました。
サモラ・チンチペ州への山道
アソプロマス加盟農園
5月11日(日) アソプロマス組合と野生カカオの評価
朝からアソプロマス組合を訪問。発酵時の温度管理については、「45℃を超えたら取り出す」というラインの共有が改善ポイントとして確認できました。発酵プロセスは6日間後の7日目取り出しを確認。もう1日、2日短縮できる可能性も感じました。
3地点の野生カカオを比較評価。パランダの野生カカオはナショナル系が基調。9日に食べた「87番」と番号が振られたホワイトカカオは外観が100%白色で、遺伝子検査ではナショナル90%以上+カカオ・アマゾニコの分類。
チンチペはナショナル系の標準的な風味。コンドルは3地点の中で最も大木が多く、花のようなアロマが際立ちます。クラレイ種に近い香りを感じるものもありましたが、ナポ州のホワイトカカオとはかなりの違いがあるように感じました。
河田博士との対話の中でカカオの部位の正式名称についても学びを得ることができました。一般的に「胚乳」と呼ばれるカカオの部位は、正確には「子葉」または「種子」が適切な呼称とのこと。僕たちも今後、ホームページや各種情報発信の中で「胚乳」ではなく「子葉」「種子」という表現を使っていこうと考えています。
アソプロマス組合 発酵センター
野生カカオ比較
5月12日(月) ウィニャック訪問とカカオの森プロジェクト確認
5月11日の夜のうちに車でナポ州へ移動(雨の影響もあり、4〜5時間かかりました)。12日の朝からウィニャックのメンバーと挨拶し、今回の旅のスケジュールや互いの近況を確認した後、ポストハーベストセンターへ向かいました。
野生カカオ「クラレイ」品種の試食では、今年もその品質の高さと独自性のある花の香りを改めて確認できて、一安心。
今回の主な目的である、カカオの森プロジェクトの苗床を確認。その後、6月にテレビでチャクラに関する放送が予定されているケイラとそのお母さんのマレーネのチャクラを訪問しました。
ポストハーベストセンターの裏にある苗床では、種から2〜3ヶ月で苗木まで育つことを改めて確認。チャクラを訪問すると、2024年に植樹した木からすでに十数粒のカカオの実がなっていることを目視で確認できました。最初の収穫が今年、少量ながらできることを確認できて、本当に嬉しく思いました。個体差はかなり大きく、1m程度の幼木から立派に育ったものまでさまざまで、遺伝的差異と土壌の違いの両方が影響していると感じました。また、ナショナル系は枝に赤い花、クラレイ系は白い花が咲くという品種の見分け方も、現地で改めて確認できました。
苗床の苗木
ケイラのチャクラ
2024年植樹のカカオに実が
5月13日(火) 植樹式とコミュニティ訪問
横浜のVANILLA BEANSとウィニャック、そして支援農家31名とともに植樹式を開催しました。平日のため多くの若者は学校に通っており、この日の参加は19名。
それぞれが自己紹介をしてお互いに感謝のメッセージを伝え合い、ウィニャック組合のスタッフとして正式に働くことになったジョニーによるプレゼンテーション、VANILLA BEANSからの商品紹介とその場での試食など、充実した時間になりました。アマゾン地域では暑さもあってチョコレートを食べる機会はそれほど多くありません。ウィニャックのナショナルアリバカカオ、クラレイ、アマゾンバニラ、伝統的なイシュピンゴ(エクアドルシナモン)を使ったチョコレートなど6〜7種類を食べてもらいました。自分たちの家族が育てたカカオがこんなチョコレートになるんだと感じてもらえた場でした。「すごくおいしい」と言っている顔が印象的でした。
植樹式の後は支援農家の一人、サニーのチャクラを訪問し、一緒に今年分の苗木を何本か植樹。サニーの父親であるウィリアムから、苗木を植える前に行う伝統的な祈りの儀礼「パホ(親から子へエネルギーを渡す儀式)」も取り行われました。
帰り道では、赤いカカオのポッドを割ると中身がホワイトカカオという場面も。外見が赤くても中身が白い、ナショナル、クラレイ、トリニタリオ系が混在するこのエリアならではの遺伝的多様性を改めて確認しました。
夜はママノがマカンボを仕入れているキャノピーブリッジでの食事会。数名の若者農家とウィニャック組合のメンバーも参加し、マカンボ料理やマカンボ味噌を使った料理、エクアドルアマゾンのさまざまな植物や木の実を使ったクリエイティブなアマゾン料理を堪能。チャクラで取れたものだけでここまでできるのかと驚かされる、いい食事会でした。
植樹式 / 19名が参加
チョコレートの試食
伝統的な祈りの儀礼「パホ」
5月14日(水) 野生カカオの探索と森林再生プロジェクト視察
朝4時50分出発。車で1時間半走り、川を渡り、そこから徒歩1時間半。長靴か防水スパイクが必須の道のりです。到着すると50〜60名のメンバーが集まっており、村長・副村長が出迎えてくれました。そこから10名ほどが同行して一緒に野生カカオの探索へ向かいました。
ナポ州のこのコミュニティはほぼ100%ホワイトカカオ。今年はコミュニティに近い範囲の木にも数本ずつ実がなっており、15メートルほどの高さに登って実を取ってもらう場面もありました。1時間ほど歩き回って野生カカオを集めましたが、この日に収穫できたのは合計5キロのみ。改めてホワイトカカオを収穫することの大変さを現地で感じました。
雨も多く、野生動物にすぐ食べられてしまうこと、木に登るのが大変なこと、村が少し高齢化してきていること、そして現金がなくてもフルーツなど豊かな自然の恵みで生活が成り立つ環境であること、そういった現実とすり合わせながら、「どうやったら収穫できるか」を話し合いました。その結果、翌週から数名が村に泊まり込み、村の記念日に合わせて収穫を集中的に実施することを決定。村の創設者の一人であるシャーマンにも同行してもらうことになりました。
NGOママノアマゾニアが実施している森林再生プロジェクトの現場も視察しました。現在はトウモロコシ畑になってしまっている土地や、原生林の中でも過去に木を切ってしまい太陽が入りすぎている区画に、野生カカオと在来種の木を植樹中。数年後にはジャングル環境への回復を目指しています。探索中、コミュニティのメンバーが、最も大きな木を前に「この木は森の聖なる木で、空気(?)がいいんだ」と語っていた場面が印象に残っています。
野生カカオの探索
15mの高さから収穫
森林再生プロジェクト現場
5月15日(木) ナポ州コミュニティ訪問とカカオ集荷に同行
「ハミングバードの山」という意味を持つキンキウルクとインチアキ・コミュニティを訪問。キンキウルクは古いナショナルの木が豊富で収穫量も多く、農家1人の1回の収穫で数百ドルの収入になる場面にも立ち会いました。農園でカカオのポッドの割り方などを確認し、支援農家の一人であるジョフレ分の今年の植樹も実施。
10時頃にウィニャック組合の集荷チームがコミュニティに到着。現場でカカオを計測しその場で現金を支払う、その一連の流れに同行しました。その後、ウィニャックの集荷車に乗ってインチアキ・コミュニティの複数の農家も訪問。昨年よりカカオ価格は下がっているものの「ウィニャックはすごくいい価格で引き続き買ってくれている、ありがたい」という声や、「もっと高い価格で買ってくれると嬉しい」という率直な意見も直接聞くことができました。
ポストハーベストセンターでは木箱から果肉と果汁が染み出している発酵の様子を確認し、糖度を測定。約16度。スタッフが丁寧に不要な部分を取り除いている様子も確認しました。この丁寧な選別こそが、ウィニャックのカカオの美味しさの秘訣です。
キンキウルクの農園
ウィニャック集荷の現場
発酵センター / 糖度約16度
5月16日(金) 最終日 ウィトカ・アリグアユサ組合訪問
最終日はコーヒー組合であるウィトカ、グアユサやジャングルピーナッツの仕入れ元であるアリグアユサ組合、およびアリグアユサ組合に所属する農家のチャクラを訪問。ウィトカは非常に先進的な組合かつ企業で、堆肥化の取り組みとして排泄物からキッチンゴミまでを全て肥料として再利用するサイクルが機能していることを確認。チャクラの思想を実践した取り組みとして、参考になる点がたくさんありました。
ウィトカ組合
アリグアユサ農家のチャクラ
10日間の視察を終えて
みんなで育てるカカオの森プロジェクトは、順調に木が育っています。31名の若者も学校に通いながらもしっかりとチャクラに取り組んでいる人が多く、プロジェクトが着実に進んでいることを確認できました。
2024年に植樹した木がわずか2年でカカオの実をつけていたことにも驚きました。ゼロから自分の農園を初めて持った人たち、それこそ17歳だった子たちが、初めてカカオを収穫できる。それがお金になり、家族を支えられたり、学校に通えたりする。そのサポートができていることに、横浜のVANILLA BEANSに改めて感謝したいと思います。
また、サモラ・チンチペ州の遺跡訪問と研究者との議論は、自分の好奇心を改めてかき立ててくれました。カカオの歴史は1,100万年前に始まり、5,500年前には人類がカカオを食べていた。その歴史的な文脈の中で、自分たちが扱うカカオがあり、風味の多様性がある。そのように捉えることで、ママノの仕事にさらに深みと新たな発見が生まれる気がしています。
カカオはただの農産物ではなく、この土地の人と森と社会の記憶でもあると思いました。その背景を持つカカオとチョコレートを日本の皆さんにお届けし続けることが、僕たちの役割です。ますます情熱を持って取り組んでいきたいと思っています。
来年4月には、チョコレートメーカーの皆さんやカカオ・チョコレートに関心の深い方々をお誘いして、エクアドル視察を行う予定です。また、このプロジェクトを主導するVANILLA BEANSのプレミアムラインの商品、シルキーショコラや5月に発売されたシルキーパリトロ、ショコラカレなど、を購入いただくことが、このプロジェクトの資金にもなります。応援!という気持ちでなくても、ナポ州のキチュア族の仲間たちがチャクラ(伝統的なアグロフォレストリー)で育てたカカオを使ったチョコレートは純粋に美味しいので、ぜひ食べてみてほしいです。
Project / みんなで育てるカカオの森
みんなで育てるカカオの森プロジェクト
横浜のVANILLA BEANSが主導するこのプロジェクト。エクアドル・ナポ州の先住民キチュア族の若者農家31名が、初めて自分のチャクラを持ちカカオを育てています。2027年の初収穫を目指して、現在も着実に成長中です。
プロジェクト詳細を見る31
名の若者農家
9,300
本の植樹数(累計)
2027
年、初収穫予定
VANILLA BEANS / プロジェクトから生まれたチョコレート
Limited / 先着10名・期間限定
【渡航記念】エクアドルカカオを味わうショコラカレセット(オンライン解説・報告会付き)
ショコラカレ・エクアドルアソートとショコラカレ・エクアドルクリオロのセット。2026年5月29日(金)19時から開催のオンライン解説・報告会への参加権付き。先着10名限定。
PREMIUM
ショーコラ シルキー・ミルク
ウィニャックのアリバカカオを使用。口に入れた瞬間からすっと消えるなめらかな口どけ。JAPAN FOOD SELECTION グランプリ受賞。
PREMIUM
パリトロ シルキー・スイート
ウィニャックのアリバカカオを使用。3層仕立て。異なる層が重なり合う究極の口どけ。金粉をあしらったプレミアムな一品。
STANDARD
タブレットショコラ・エクアドル70
希少なアリバカカオを使用。酸味控えめで、コーヒーのようなまろやかな苦みとアーモンドに似た豊かな香り。
For Business / カカオ豆の法人仕入れ
ウィニャックのカカオ豆を、チョコレート作りに使いたい方へ
ショコラティエ、パティシエ、食品メーカーなど、ナポ州のアリバカカオ(ナショナル種)をご自身のチョコレート作りに使いたい方向けに、ママノではカカオ豆の販売も行っています。農薬不使用・化学肥料不使用、伝統的なチャクラで育った希少なカカオです。
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