発酵が進んだカカオ豆の断面。紫からピンクへ色が変化している

カカオ発酵で香りはどう変わるか。ウィニャック組合の工程と品質管理

カカオの発酵とは、収穫した豆を果肉ごと木箱に入れ、微生物のはたらきと温度の上昇によって、チョコレートの香りのもとをつくる工程です。ママノチョコレートは、エクアドル・ナポ県のウィニャック組合(WINAK)と一緒に、この工程を毎年計測しながら設計しています。この記事では、集荷から発酵、乾燥、選別、輸送までの流れと、2026年の実測から見えた変化を紹介します。

発酵は何をしているのか

カカオ豆は、収穫してそのまま乾かしてもチョコレートの香りにはなりません。果肉に含まれる糖を微生物が分解し、その熱で木箱の中の温度が上がっていきます。この温度上昇が、種子としての成長を止め、香りのもとになる反応を進めます。

ママノでは発酵を終える条件のひとつとして、木箱内の温度が45度を超えて数時間が経過していることを重視しています。日数だけで機械的に決めているわけではありません。

ウィニャック組合の集荷から発酵まで

ウィニャック組合では、おおむね次の流れでカカオが集まります。

  1. 農家が前日にカカオポッドを割る
  2. メッシュ袋に入れて果汁を自然に落とす
  3. 翌日に組合が集荷に来る
  4. 計測と支払いを行う
  5. 組合に持ち帰り、木箱に400kg入れて発酵を開始する

発酵は3段に重ねた木箱で行い、定期的に撹拌します。近いコミュニティと遠いコミュニティ、収穫した時間、果実の状態によって、木箱に入る時点の果汁量にはばらつきが出ます。

ママノが見ている5つの数値

2026年のシーズンは、次の5項目を継続して記録しています。

  • Brix(糖度)
  • 果肉のpH
  • ニブ(豆内部)のpH
  • 木箱内の温度
  • 外気温

木箱の中の変化を数値で追いながら、最後は乾燥後の豆を実際に味わって、その年の発酵設計を判断します。

2026年の発酵経過の記録。中心温度、ロット別のBrix、果肉と豆内部のpHの推移を示したグラフ
中心温度、Brix、果肉と豆内部のpHを経過時間ごとに記録しています。

発酵を終えるタイミング

ママノ向けのロットは、近年はおよそ96時間を基本として、5日目に木箱から取り出しています。ただし発酵日数は年やロットによって変わります。同じ組合の豆でも、その年の気候や、どの顧客向けのロットかで設計が違います。例年の温度の動きは次のとおりです。

  • 4日目に平均43度ほどまで上昇し、40度を下回ることはほとんどない
  • 5日目に48度ほどまで上がり、その時点で発酵を終える

2026年に見えた変化

2026年のナポ県は例年より寒く、雨の多いシーズンになりました。収穫の立ち上がりも12月ではなく1月下旬からでした。その影響で、4日目の温度の上がり方が例年より低くなりました

  • 4日目の木箱内温度が33度から40度にとどまるケースが多い
  • ただし5日目には前年と同じく48度前後まで上がる

途中の上がり方は違うものの、最終到達点は近い状態です。取り出しまでの経過時間は前年と同じで進めています。この違いが最終的な香味にどう出るかは、乾燥後の評価とあわせて見ていきます。

ロット別の発酵推移。Brix、果肉pH、豆内部pH、中心温度を経過時間ごとに並べた4つのグラフ
ロットごとに経過を分けて記録し、その年の設計を判断します。

発酵日数を変えると香りはどう変わるか

発酵時間の違う豆を別々に乾燥させて評価したところ、次の傾向が見られました。

  • フローラル、フルーティ、青さは、3日目以降に少しずつ減っていく
  • チョコレートらしさ、コク、ボディ、ミルキー感は、少しずつ増えていく

ママノがウィニャック組合のアリバに求めているのは、フルーティさとフローラルさを最大にする方向です。そのため短めの発酵を選んでいます。軽やかなボディになりやすく、低温焙煎と相性のよい豆になります。

ウィニャック組合は、ママノ以外の海外の顧客向けには6日発酵で仕上げている豆もあります。2026年の実測では、5日目より6日目のほうがニブ内部のpHが0.1から0.7ほど低く、木箱の中心温度も2度から3度低いという違いが出ました。同じアリバでも、同じ組合でも、目指す味が違えば発酵設計は変わります。

乾燥。水分値を7%以下に落とす

発酵を終えた豆は、乾燥テント内の高床式乾燥台で天日干しします。雨の多い地域なので、乾燥は毎年の課題です。

2025年のロットでは、雨が続いて水分値が7.8%まで上がったため、3日ほど再度天日干しをして水分値を下げてから、輸出用のグレインプロバッグに詰めました。水分値が高いままだとカビの原因になります。

選別と欠点豆

乾燥した豆は、機械と手作業を組み合わせて選別し、不純物と欠点豆を取り除きます。ウィニャック組合とママノの現地パートナーが直接、品質チェックを行います。

発酵の進み具合はカットテストで確認します。豆を切って断面の色を見ると、発酵が十分に進んだ豆と不足している豆を見分けられます。ママノが使う豆は、発酵度が高く欠点豆の少ないものを選んでいます。

保管と輸送

選別を終えた豆は高品質袋で保管し、10度以下の温度を保った船便で日本へ運びます。エクアドルを出てから届くまでの間に品質が落ちないようにするためです。

よくある質問

カカオの発酵は何日かかりますか。

ママノ向けのウィニャック組合のロットは、近年はおよそ96時間を基本として、5日目に木箱から取り出しています。ただし日数だけで決めるのではなく、木箱内の温度が45度を超えて数時間経過していることを条件のひとつにしています。発酵日数は年やロットによって変わります。

発酵の日数が変わると味はどう変わりますか。

発酵時間の違う豆を比べると、フローラル、フルーティ、青さは3日目以降に少しずつ減り、チョコレートらしさ、コク、ボディ、ミルキー感は少しずつ増える傾向がありました。

発酵中はどんな数値を測っていますか。

Brix(糖度)、果肉のpH、ニブ(豆内部)のpH、木箱内の温度、外気温の5項目です。数値を追ったうえで、最後は乾燥後の豆を味わって判断します。

2026年の発酵は例年と何が違いましたか。

4日目の温度の上がり方が低くなりました。例年は4日目に平均43度ほどまで上がり40度を下回ることはほとんどありませんが、2026年は33度から40度にとどまるケースが多く見られました。ただし5日目には前年と同じく48度前後まで上がっています。

乾燥はどのように行いますか。

乾燥テント内の高床式乾燥台で天日干しします。雨が続いて水分値が上がった場合は、再度天日干しをして下げてから袋詰めします。

発酵の状態はどうやって確認できますか。

カットテストで確認します。豆を切って断面の色を見ると、発酵が十分に進んだ豆と不足している豆を見分けられます。ご希望があれば、カットテストにオンラインで立ち会っていただくこともできます。