2026年8月18日の講演会で、エクアドル産カカオ豆の比較スライドを示しながら話す江沢コータロー

#7 味わって理解する野生カカオ イベント:チョコレートの起源をめぐる旅 より 【2026年8月19日配信】

2026年8月18日、港区立産業振興センターで開催した講演会より。佐藤清隆先生のあと、江沢コータローが野生クラレイとアリバカカオを会場で食べ比べながら、チャクラ、発酵、原生林への植樹までを話した回です。

その日の会は「チョコレートの起源をめぐる旅。野生カカオ探索と5500年前の遺跡を訪ねて」です。広島大学名誉教授の佐藤清隆先生を迎え、アマゾンの野生カカオ探索と、サンタアナ・ラ・フロリダ遺跡の話を聞き、アリバカカオと野生クラレイの食べ比べも行いました。詳細はPeatixと、告知記事にあります。

今回の音声は、その会の後半、江沢が担当したテイスティングのパートです。来年4月のエクアドル旅の案内から始まり、会場で食べた2種を紹介します。ひとつは野生のホワイトクラレイ。もうひとつは、ナポ県の在来種系アリバカカオです。

単一栽培の改良品種CCN51は、エクアドル平均でヘクタールあたり乾燥豆1320キロほど。チャクラのナショナル種は300〜500キロ。野生カカオは今年30キロ、去年100キロ、0キロの年もあり、生産性はおよそ500倍違います。それでもチャクラは、キチュア族の農家が裏庭で食べるものを確保する仕組みです。イシュピンゴ、エクアドルシナモンの香りが、チャクラのアリバに移っていると感じ始めたのは、毎年食べ比べて7、8年目でした。

クラレイは商業栽培にもハイブリッドにも使われていません。ウィナク組合が集めた豆は、遺伝子分析でクラレイ100%と記載されています。乾燥豆はアリバ約1.2グラム、野生クラレイ約1.7グラム。どちらも発酵は4日と短め。揮発しやすい繊細な香りを、焙煎で飛ばさないためです。アリバはスパイスやハーバル、軽やかな印象。クラレイは標高900メートル付近。種が白いので、カカオ70%にしても明るい茶色が残ります。果肉の時点でラベンダーやバラの香りがしたので、発酵で足すより、果肉と種が持っている香りを残す作り方にしています。

NGOママノアマゾニアでは、おととしと去年で野生クラレイを約3000本、原生林に植え直しました。今年はナポ県とオレリャナ県で、月に4回ほどコミュニティを訪ねて探索しています。すぐ近くでは金の採掘で森がえぐられています。世帯年収が10万円ほどの家にとって、採掘は1日40〜100ドルになる仕事です。森を切りたくないという価値観と、収入を両立できたら、というのが今の取り組みです。

今回のテーマ

野生カカオを味わって理解する。チャクラで育つアリバと、白い種のクラレイ。生産性の低さの向こう側にある香りと、森を残す理由を話します。

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今回の内容

00:00 来年4月のエクアドル旅

00:56 今日の2種(野生ホワイトクラレイ/アリバカカオ)

01:22 生産性の差

03:18 チャクラという農園

03:57 イシュピンゴとテロワール

05:42 クラレイの分布と遺伝子

07:13 種のサイズと4日発酵

08:50 アリバカカオの香り

10:04 クラレイの標高・色・味わい

12:39 果肉の香りと短い発酵

14:40 原生林への植樹と探索

15:38 なぜ野生カカオを増やすか

タイムスタンプ付き発言録

00:00 来年4月のエクアドル旅

00:00:00江沢コータロー

まず、来年の4月のご案内です。ここにいらっしゃる方でも、申し込んでいただいている方がいます。エクアドルに行きますので、ご興味のある方はぜひお申し込みください。

こんな旅ができます。今ご紹介のあったような野生のカカオ、アリバカカオの美しい農園、チャクラという世界農業遺産にもなっているシステムです。伝統的なアグロフォレストリーの形です。

森のような農園の中を歩き、カカオの発酵や乾燥など、現場でカカオに触れて、温かさを感じてもらうことをやりたいと思っています。

アナグマの一種だと思いますが、これはチャクラの農園で懐いているものです。こんなものにも出会えるかもしれません。

00:56 今日の2種

00:00:56江沢コータロー

今日のテイスティングは2種類です。野生のホワイトクラレイ、クラレイ系統のカカオと、もうひとつはアリバカカオです。在来種系のアマゾン地域のアリバカカオです。

アリバカカオといっても何百種類もあります。その中で、在来種系のナポ県のアリバカカオ。この2つをお召し上がりいただきます。最後に食べていただきますが、その前にお話しします。

01:22 生産性の差

00:01:22江沢コータロー

普段、アグロフォレストリーのシステム、森のような農園でカカオを育てるのがいい、と伝えています。環境にもいいし、人にも優しいし、カカオもおいしくなる、と。ただ、生産性はとても低いです。野生のカカオも、毎年苦労して収穫してもらっています。やけに苦労するなと毎年思っていて、数字にしてみました。

ヘクタールあたり、1本の木に何個の実がなるか、1個の実あたりに何個の種があるか、を計算すると、単一栽培で改良品種のカカオ、たとえばCCN51を例にすると、ヘクタールあたり平均で、エクアドルでは1320キロぐらい、乾燥カカオ豆の重量で収穫できています。

僕らがいつも活動しているナポ県、アマゾン地域のチャクラで、品種としてはナショナル種、おいしいカカオだと、生産量も落ちます。ヘクタールあたり500キロとか、300キロぐらいのところも全然あります。

野生カカオがどれぐらいかを計算すると、今年は30キロしか取れませんでした。去年が100キロぐらい。その前は0キロだった年もあります。これだけで、だいたい500倍弱ぐらいの生産性の差がありました。改めて数字にしてみたところです。いま改良して、理論上は3トンぐらい、3000キロとか6000キロぐらいまでいける、という理論値をINIAPの研究者たちは出していました。上は伸びていくけれども、こちらはそんなに変わらないままです。そのアリバカカオと、野生のクラレイカカオを食べていただきます。

03:18 チャクラという農園

00:03:18江沢コータロー

左上がモノカルチャー、単一栽培です。別にこれが悪いというわけではありません。比較として出しています。こっちがチャクラ、森のような農園です。

木の高さも、単一栽培の農園より比較的高いです。最低30種類、多いところだと120種類ぐらいの作物があります。バニラ、パイナップル、ユカ、バナナ。いろいろなものを扱っています。純粋にカカオの生産性だけで比べれば低いのですが、ほかのものもマーケットには売れます。

03:57 イシュピンゴとテロワール

00:03:57江沢コータロー

まず大切なのは農家です。キチュア族の農家が食べるものを、自分たちの家の近くの裏庭で確保できる。チャクラは裏庭という意味です。フードセキュリティ、食料安全保障のうえで大事なので、純粋に生産性だけを比べることはできません。

個人的には、チャクラで育ったカカオはとてもおいしくなる、と8年目ぐらいにようやく確信を持って感じ始めました。毎年食べ比べていて、チャクラで育っているイシュピンゴ、エクアドルシナモンと呼ばれるローリエ系の木があるのですが、その香りがずっとするな、と思っていました。同じアリバでも、ほかの地域ではそれがしない。毎年食べ比べて、やっぱりそうだなと感じたのが7、8年目ぐらいです。

そういう交わりが、いわゆるテロワールになって、カカオの味になっているのかな、と感じたりします。

こういったものが取れます。右下はタバコ、真ん中はグアユサ茶、右上がチチャというドリンクです。おそらく、この壺に入っていたものと似たドリンクです。アルコール分は1%ぐらい。自然発酵で1%ぐらい。これはユカという芋のチチャです。アンデス地域だとトウモロコシのチチャだったり、カカオのチチャもあり得ます。いろいろなチチャがあって、アルコール分1%くらいで少し保存が効き、元気も出る。ちょっとお酒も入っている、というのが中に入っていた、という感じです。パイナップル、昆虫食、ジャングルピーナッツ。いろいろなものが取れます。

05:42 クラレイの分布と遺伝子

00:05:42江沢コータロー

次は野生のカカオの紹介です。ここは重なっているので省略します。

もし興味があれば、この研究所が出しているカカオのカタログがあります。100種類ぐらいのカカオの品種が載っていて、そのうちクラレイという品種がどう扱われているかというと、南の川、つまりサモラチンチペのほうから、ナポ県の北部まで広がっている。ナポ県は右上のほうです。クラレイ川流域を通って広がっているけれども、商業栽培には使われておらず、ハイブリッドにも使われていない、ということです。

いま収穫をお願いしているウィナク組合が集めたカカオが、ここにデータ登録されていて、遺伝子割合はクラレイ100%と記載されています。

これはモタ・マヨールさんの遺伝子分析の結果から、論文から引いてGoogle Earthに落としたものです。エクアドルのアマゾン地域にはクラレイ系の品種があったり、沿岸地域にはナショナル系があったりします。6月に出た論文では、最近Napoはクラレイからさらに分類しよう、という話も出ていて、Napoという呼び名の品種も、これからまた出てくるかな、というのもあります。この辺は、さっき佐藤先生の話にもありました。論文によって、科学者によって分類方法が違ったりするので、ここは参考程度に、という感じです。

07:13 種のサイズと4日発酵

00:07:13江沢コータロー

いよいよカカオの比較です。まず種のサイズが違います。こっちのアリバカカオは約1.2グラム。こっちの野生クラレイカカオは、乾燥豆で1.7グラムぐらい。すごく大きいです。小さくても大きくても、どっちもおいしくなります。あくまでサイズの違いです。

発酵日数はいま4日間。2つとも4日間としています。比較的短めに仕上げています。理由は、揮発系の香りです。とても繊細な、小さい分子の香りは、焙煎すると飛んでしまうことが多い。発酵が長いと消えてしまうことも多いので、発酵時間をできるだけ短めにして、本来、果肉と種が持っているポテンシャルをできるだけ残してあげたい、ということで、短めの発酵時間にしています。

この前、NHKの「世界で開け!ひみつのドアーズ」という番組で、宇都宮さんが、日本人はこういうカカオが好き、という話をされていました。日本人は発酵時間が短めが好き、ヨーロッパは発酵時間長めが好き、という話をして、それがグラフでテレビ番組に出ていました。そういう傾向はあるのかな、と思います。僕の好みで、こういう発酵時間にしている、という感じです。

08:50 アリバカカオの香り

00:08:32江沢コータロー

左側のアリバのほうは、スパイスとかハーバル系の、爽やかで明るい香りの気持ち、いろいろなものが感じられます。もう開けてもらっても大丈夫です。

まずアリバカカオから。いま言ったスパイスというのは、さっきのエクアドルシナモン、イシュピンゴの香りがちょっとしたり。カカオの香りは、たしか1000種類とか500種類とか言われているので、どの香りを捉えられるかは、各個人が持っている香りの記憶と結びつく部分があります。僕はエクアドルシナモンの記憶が結構あるので、そこが結びついたりします。

このチョコレートは、滑らか系もあるのですが、ザクザク系にしています。フルーツっぽい感じもチョコレートから感じられるかなと思いますし、軽やかな印象です。ボディは、どっしり乗る感じではなくて、ふわふわした、軽い感じに仕上げています。これは焙煎やチョコレートの作り方によって、ある程度作り分けはできます。ただ、本来持っている豆に合わせて作ってあげる、というのが大事です。またあとでゆっくり食べていただきます。

10:04 クラレイの標高・色・味わい

00:10:04江沢コータロー

次、右側です。クラレイ系。ちなみに両方とも標高が結構高いです。アリバカカオは標高500メートル。エクアドルはほとんど沿岸地域がメインで栽培されているので、沿岸は50メートルとか、そういうところがほとんどです。ここは山のほうなので、アリバでも500メートルから700メートルぐらい。野生のカカオは900メートルぐらいのところで栽培されています。

コーヒーほど標高の高さは言われていないのですが、標高が高くなれば果実の凝縮度が上がる、香りの密度が上がる、というのはコーヒー業界でも当たり前に言われていることです。カカオでもそういうことがあるのかな、と感じながら。

食べる前に、色を見ていただきたかった。色を比べていただければと思います。同じカカオ70%なのですが、左側が濃い茶色で、右側が明るい茶色になっています。右側が明るい茶色になっている理由は、本来、カカオの種を切ったときに真っ白なので、チョコレートに仕上げていっても、焙煎をしても、この明るい茶色が残っていく、ということです。

このカカオの品種は、あまりチョコレートになっていることがないので、初めて食べる方は食べ慣れない場合もあると思います。渋いとか苦いとか言われることもあるのですが、香りをちょっと捉えていただいて。この渋さは、渋くないように作ることもできます。たとえば横浜のバニラビーンズが作っている、この野生クラレイのタブレットは渋くないです。もっとマイルドに仕上げています。僕はどちらかというとカカオ屋なので、そのカカオの本来の香りを味わっていただく、という意味で、これは割と強い仕上げ方にしています。

12:39 果肉の香りと短い発酵

00:12:39江沢コータロー

カカオの果肉の香りがとても大事です。実は種になる前に、果肉の香りがどれだけあるか、どんな香りを持っているかで、結構決まっているかな、と最近思っています。カカオポッドを割って果肉を開けたときの香りと、果肉からどんな香りがするか。結局、果肉を発酵させて、そこで4日間とか寝かせて、カカオの素を作っていくので、そのカカオの味が種に浸透していく、という意味合いです。

この野生のクラレイカカオは、初めて食べたときに果肉の香りにまずびっくりして、果肉の時点でラベンダーとかバラの香りがしたので、これだったらほとんど発酵させないほうがいい。発酵によってできてくる味わいよりも、本来カカオの果肉や種が持っている香りを活かしてあげたほうが、面白い、個性的なチョコレートになるかな、と思って、こういう作り方にしています。発酵時間も短め。3日間とかもあり得ると思うのですが、より渋くなる。僕は結構3日発酵ぐらい好きなのですが、さすがに渋すぎる、というお客さんからの意見をいただいて、泣く泣く4日にしました。本当は3日発酵で出したい、という感じです。

もう少し生産量が増えてくれば、発酵の段階から作り分けはできるのですが、いまはまだ本当に少ない量で、30キロとかなので、アリバカカオの400キロの木箱の中に、野生クラレイをメッシュに入れて、中に入れて、しっかりと発酵させている、という感じです。百合とか、真っ白い花とか、そんな感じのイメージが湧くかなと。渋みの向こう側にはフルーツ。シャインマスカットとか、軽い感じの、緑色の系のブドウの香りとかも感じられるんじゃないかなと思います。

14:40 原生林への植樹と探索

00:14:40江沢コータロー

いま野生カカオのほうでやっていることは、どういうことか。ママノチョコレートと、NGOママノアマゾニアという団体も運営しています。NGOママノアマゾニアのほうでは、公益事業になるのですが、おととしと去年で、野生のクラレイカカオを3000本ほど、原生林にもう一回植え直しました。チャクラではなくて、本当に原生林に植え直して、森を増やす、ということをしていきました。

今年やっているのは、野生カカオの探索事業です。いまいろいろなところで野生カカオが探索されているのですが、僕らもNPOとして、主にナポ県と、その隣のオレリャナ県で、だいたい月に4回ぐらい、いろいろなコミュニティを訪問して、どんな関わりがありますか、という話やヒアリングをしています。もう少し増やせるといいな、と思っています。

15:38 なぜ野生カカオを増やすか

00:15:38江沢コータロー

最後です。この野生カカオをなぜ増やしたほうがいいかというと、おいしいチョコレートをもっと増やしたり、残したい、というのはあります。ただ、ここのコミュニティ、標高400メートルのところで取れるのですが、そのすぐ近くをよく見ると、採掘と金の採掘があちらこちらで行われています。

こちらは、あまり水銀を使った金の採掘というよりは、もっとシンプルに、水圧でバーッと飛ばして金を洗う、という感じでやっているので、そこまで川に水銀が流れて体に影響がある、という話ではないです。ただ、シンプルに森が相当えぐられて、泥になって、草も生えない状態です。これはよくないし、コミュニティのメンバーも本当は嫌だけれども、非常に貧しい。エクアドルの平均収入の10分の1以下の地域なので、金の採掘の仕事をすると1日40ドルとかになる。年間世帯収入が10万円ぐらいの家だとして、金の採掘に従事すると1日40ドルから100ドルぐらい手に入るので、つい、というか、仕方なしに従事することもあります。

ですが、当然、森を切りたくない、売りたくない、というのは、キチュアの人たちの価値観としてあるので、そこが野生カカオで、原生林と収入源を両立できたら一番いいかな、というところで、現地の人たちと協力してやっている、というところです。

関連リンク

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