ハリナシバチの養蜂。巣を壊さずに蜜を採る方法とアマゾンの森

ハリナシバチの養蜂。巣を壊さずに蜜を採る方法とアマゾンの森

ハリナシバチの養蜂とは、針を持たない蜂ハリナシバチを巣箱で飼い、蜂蜜を採ることです。メリポニカルチャー(meliponiculture)と呼ばれ、中南米では数千年前から続いてきました。西洋ミツバチの養蜂とは、巣箱の構造も、蜜の採り方も違います。この記事では、ママノが蜂蜜を仕入れているエクアドル・ナポ県の養蜂家の作業をもとに、その中身を紹介します。

巣箱は「蜜の段」と「育児の段」に分かれている

ハリナシバチは、六角形の巣板ではなく、壺のような形の容器に蜜を貯めます。壺に貯まることから、ハリナシバチの蜂蜜はポットハニーと呼ばれます。

現在エクアドルで使われている巣箱は、この性質に合わせて段が分かれた構造になっています。上の段が蜜を貯める区画、下の段が女王蜂の産卵と幼虫の成育の区画です。あいだには仕切りが入っていて、女王蜂が上の段へ上がらないようになっています。

ハリナシバチの巣の内部。蜜を貯める壺状のポットが並んでいる
メリポナ・イブルネアの巣の内部。この壺ひとつひとつに蜜が入っています。

採蜜は上の段だけ。巣そのものは壊さない

段が分かれているおかげで、採蜜のときは蜜の入った上の段だけを取り出せます。幼虫や女王蜂のいる下の段には手を触れません。巣を壊して蜜を搾り取るのではなく、蜜の部分だけを収穫して、群はそのまま生き続けるということです。

採るのは、ハチが蓋をした完熟の蜜だけです。蓋がされているかどうかが、ハチ自身による「もう完成した」という合図になります。

採れる量は多くありません。ママノが扱うメリポナ・イブルネアの場合、花の咲く時期でも1つの巣箱から1日およそ10gです。ハリナシバチ全体でも、1つのコロニーから採れる蜂蜜は最大1kg程度で、西洋ミツバチの最大5kgに対しておよそ5分の1だと報告されています。(Rozman AS ほか, 2022, Applied Sciences 12(13), 6370)

野生の巣を巣箱へ移す

養蜂を始めるには、巣が要ります。倒れた木や切り株の中に自然にできた巣を見つけ、巣箱へ移すという方法があります。これには手順が決まっています。

  1. 雨の降っていない午後に作業する。気温と天候が落ち着いている時間帯を選びます。
  2. 木の中にあったときと同じ向きのまま移す。巣の上下や前後の関係を崩さないようにします。
  3. 幼虫のいる育児房はとくに慎重に扱う。崩れると群が育たなくなります。
  4. 女王蜂を必ず見つけて一緒に移す。産卵を始めた女王蜂は飛べないため、手で捕まえて巣箱に入れます。女王がいなければ群は続きません。
  5. 巣箱の入口を、元の木の入口と同じ位置関係に置く。働きバチが戻ってこられるようにするためです。

そのあとも、一度に全部を移すのではなく、少しずつ移していきます。

メリポナ・グランディスの巣の入口。泥と樹脂でつくられた凹凸のある形
巣の入口は種ごとに形が違います。巣箱に移すときも、この入口の位置関係を保ちます。

チャクラの森と、受粉という仕事

ナポ県では、巣箱は伝統的なチャクラ農法の農園に置かれています。チャクラは100種類以上の植物が共生する農園で、カカオやグアユサ、果樹、木材となる樹木が同じ場所で育ちます。

バニラの花を訪れるハリナシバチ。エクアドル・ナポ県のチャクラ農園
チャクラ農園で、アマゾンバニラの花を訪れるハリナシバチ。受粉を担っている姿です。

ハリナシバチは、この農園の植物の受粉を助けます。農家は巣を壊さずに蜂蜜という収入を得る。森を切らずに収入が生まれるので、森を残す理由になります。養蜂と森林保全が同じ方向を向いているということです。

HASA。ハリナシバチの病院

ナポ県には、在来のハリナシバチを増やす取り組みがあります。ヘフェルソン・ナルバエスとアイデ・リクイが率いる HASA(Hospital de Abejas sin Aguijón/ハリナシバチの病院)です。

HASAは5年間で50家族に技術化された巣箱と研修、その後の技術指導を提供してきました。絶滅が心配されていた種の繁殖にも成功しています。ハチを増やすことが、そのまま家族の収入と森の再生につながるという考え方で運営されています。

誰が、いつ、どれだけ採ったかを記録する

ママノは、蜂蜜を仕入れるときにいつ・どの農家から・どの種類の蜂蜜を何グラム収穫したかという記録を受け取っています。どこで誰が採ったものかが分かる状態で輸入しているということです。

よくある質問

ハリナシバチの養蜂とは何ですか?

ハリナシバチを巣箱で飼い、蜂蜜を採る養蜂のことです。メリポニカルチャー(meliponiculture)と呼ばれ、中南米では数千年前から行われてきました。西洋ミツバチの養蜂とは巣箱の構造も採蜜の方法も違います。

採蜜すると巣は壊れませんか?

壊れません。現在の巣箱は、蜜を貯める区画と、女王蜂が卵を産み幼虫が育つ育児の区画が仕切りで分かれています。採蜜のときは蜜の入った上の段だけを取り出すため、育児の部分には手を触れずに済みます。

野生の巣を巣箱に移すことはできますか?

できます。ただし手順が決まっています。雨の降っていない午後に作業し、木の中にあったときと同じ向きのまま巣を移します。幼虫のいる育児房はとくに慎重に扱います。産卵を始めた女王蜂は飛べないので、必ず見つけて一緒に移します。巣箱の入口も、元の木にあった入口と同じ位置関係になるように置きます。

1つの巣箱からどれくらい蜂蜜が採れますか?

種によって違いますが、非常に少量です。メリポナ・イブルネアの場合、花の咲く時期でも1つの巣箱から1日およそ10gです。ハリナシバチ全体では、1つのコロニーから採れる蜂蜜は最大1kg程度で、西洋ミツバチの最大5kgに対しておよそ5分の1だと報告されています。

養蜂は森にとってよいことなのですか?

ハリナシバチは熱帯の植物にとって重要な花粉媒介者です。農園に巣箱を置くと作物や樹木の受粉が進み、農家は巣を壊さずに蜂蜜という収入を得られます。森を切らずに収入が生まれるため、森を残す動機になります。

日本でハリナシバチを飼えますか?

ハリナシバチは熱帯と亜熱帯に分布する蜂で、アジアでの北限は台湾です。日本には自然分布していません。ママノは現地で養蜂された蜂蜜を輸入しており、生きたハチは扱っていません。

誰が養蜂しているのですか?

エクアドル・ナポ県の養蜂家と、チャクラ農法でカカオなどを育てている農家の方々です。ママノは、いつ・どの農家から・どの種類の蜂蜜を何グラム収穫したかという記録を受け取って管理しています。

この養蜂から生まれた蜂蜜

ナポ県の養蜂家が育てた4種の蜂蜜を、非加熱・無濾過のままお届けしています。種類によって香りも酸味も違います。

ハリナシバチの蜂蜜を見る ハリナシバチとは

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※1歳未満の乳児にはちみつを与えないでください。

執筆:江沢コータロー(ママノチョコレート代表)
2013年の創業以来、エクアドル・ナポ県の先住民キチュアの生産者とカカオ・蜂蜜・グアユサの買い付けと品質管理に取り組んでいる。この記事の内容は、現地の養蜂家ヘフェルソン・ナルバエスの養蜂場から中継したオンラインセミナーの記録にもとづく。