代表ブログ:カカオの国際価格の急騰がエクアドルアマゾン地域のダイレクトトレードカカオに与える影響について 2024.4.8
カカオの先物価格が急騰しているニュースはご存知の方が多いと思います。
このブログでは、ママノが根を下ろしているエクアドルアマゾン地域ナポ県の農業組合と小規模家族農家にどのように影響が及んでいるかを書きたいと思います。
参考)カカオ価格が1年間で3倍以上に――“カカオショック”が長期化するとみられる理由
基本的な情報
ナポ県アルチドナ、テナは立地としてはエクアドル首都のキトからアンデスを越えて車で約4時間半。
幹線道路もあるため、組合のある地域までコンテナトラックが入ることができるためアマゾン地域に位置するものの入ってこれないほどの奥地ではありません。
エクアドルのアリバカカオは世界で2%程度の希少な香り高いカカオとして、カカオの国際価格よりも高値で取引をされています。
栽培方法としては、モノカルチャーでの栽培も、当社が仕入れているチャクラシステムという伝統的なアグリカルチャー農法での栽培も可能です。
カカオの価格について
ママノが組合からカカオを購入する価格は、去年比で2024年2月は1.3倍、3月は1.5倍になりました。カカオの市場価格が去年の3倍以上になっていることと比べると数字としては穏やかな上昇に見えますが、買い手としては、元々先物価格よりも高値で設定していたこともあり影響は小さくありません。
2013年から11年間事業を行っていますが、ここまでの変動は初めての経験です。
この地域でのカカオの値上がりの直接的な理由は、企業や仲買人が今までよりも高値をつけて買いに来ているためです。アフリカのカカオの不作がエクアドルのアマゾンでの買付量の増加、価格の上昇に繋がっているということだと思います。
企業や仲買人は、朝7時前には車で農家を回り、スピーカーでカカオの買値を伝えながらカカオを購入しています。スピーカーで伝えられる価格と実際に農家に支払われる価格には差異があることが多々あります。熟していない、虫食いが混ざっているといった理由をつけ、支払い時には大幅に下がっているということもよくある話です。
それでも農家にとっては、どんなカカオであれ高い売値となるため、良い収入を得る機会になっています。金銭的に貧しい農家がほとんどのこの地域では、これはカカオの市場価格高騰の良い側面と言ってもいいと思います。
組合にとっての困難
組合にとっては、農家に支払うカカオの買値が日々上がっていくため、ママノを含む国際企業とのカカオ豆価格の交渉が非常に難しい状況になっています。
組合と企業間で1kgを x $と決めたとしても、翌週には買値が1.1 x $になってしまっていることもあり、結局組合が農家からカカオを購入できない、という事態も増えています。
ママノでは、組合との信頼をベースに、カカオの買値にある程度の幅を設けて、値上がりしてもOKという条件で、預け金をして目標量のカカオを購入できるようにしています。
今年は農家にとっては収入が増える年で、組合にとっては収入が減り厳しくなり、継続的に行っていた農家へのサポートが難しくなってくることも考えられます。
長期的な影響
当社が長期契約を結んでいるウィニャック組合には約260世帯の小規模家族農家が加盟しています。組合は、農家の生活を助けるために農家自身によって立ち上げられた組織です。
組合は、一般的な”カカオ組合”以上の意味を持って活動しています。
例えばその役割として、以下のような活動が挙げられます。
- カカオ栽培の技術講習
- 収穫日集荷日を定めて品質の良いカカオパルプからカカオ豆を作ること
- カカオパルプの一括購入による品質の高いカカオの発酵乾燥
- 国際企業からの直接契約によって高いカカオの価格を設定すること
- カカオ以外にグアユサ、バナナ、アマゾン食材などを総合的に換金作物として市場に出していくこと
- 農業組合以上のコミュニティとしての役割を果たし伝統的な知恵や知識を継承していくこと
- 一体となって先住民の権利を守る運動を組織すること
国際的な市場価格高騰にうまく組合が対応できず弱体化した場合、上記のような役割も弱体化していくことになります。
チョコレートへの影響としては、価格が上がることはもちろんのこと、品質の良いカカオを供給できなくなる、ということが一番大きく出てくるのではないかと思います。
幸い現時点では、ママノが仕入れているカカオに関しては、カカオがフレッシュな状態で発酵乾燥センターに届けられるための収穫日と集荷日の取り決めや、発酵乾燥の手順などがきっちりと守られているため、品質はよりよくなっていくと思います。ただし、最終商品価格は少し上がることになる予定です。
最近現地で起きている出来事と所感をまとめてみました。
ビーントゥバープロ向け
品質の良いエクアドル産のアリバカカオの豆を探しているお店や企業には、ぜひママノとウィニャック組合のカカオ豆をお使いいただいて、美味しいチョコレートを作っていただければ嬉しいです。
野生クリオロカカオは2023年収穫分は完売したため、2024年収穫分を予約販売しています。
アリバカカオ豆は残り1.2トンほどです。2024年収穫のアリバカカオ豆の予約販売もメールで受け付けておりますので、ご連絡ください。野生クリオロもアリバも、5月頃までに予約購入していただいた分は早期割を適用しております。
ママノ江沢
2024.4.8