インタビュー:LIVES CHOCOLATE(ライブスチョコレート)駒井さん【沖縄県沖縄市】 -物理好きのエンジニアがチョコレートの世界へ。原点は「児童労働」への想い-

沖縄県沖縄市に工房を構えるチョコレート専門店「LIVES CHOCOLATE(ライブスチョコレート)」。
LIVES CHOCOLATEにはエクアドルのウィニャック組合のアリバカカオ豆を使っていただいる上、サステナブルなカカオ豆の共同調達にも参加をしていただいています。
代表の駒井さんに、10月18日の京都みやこめっせでのイベント出店後、お時間をいただいてインタビューしました!
今日はエクアドルが一番人気!
ママノ 江沢:
本日はよろしくお願いします。今日のイベントも盛況でしたね。お店の売れ行きはいかがでしたか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
ありがとうございます。今日は焼き菓子が早々になくなったおかげか、チョコレートがよく売れました。中でも一番人気だったのは意外にも「エクアドル 70%」で、一番最初に売り切れましたね 。
ママノ 江沢:
エクアドルが一番人気とは嬉しいです!何か理由があるのでしょうか。どういった方が選ばれるんですか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
日によって違うんですが、今日は特に人気でした。エクアドル70%は、面白いことに70%のチョコレートも「美味しい!」とお子さんが選んでくれることも多かったです。

狙うは「尖りすぎていない」個性。味わいの秘密は焙煎にあり
ママノ 江沢:
(チョコレートを食べながら)このエクアドル70%、本当に美味しいです。軽い華やかな香りとチョコレートらしいしっかりとしたボディーが絶妙です。70%カカオだと、苦味や渋みなどが気になることがありますが、それを感じさせないために、どのような工夫をされているのですか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
味わいの調整は、主に焙煎で行っています。まず一度非加熱の状態でチョコレートを試作してみて、カカオ豆が持つ本来のポテンシャルを確認します。
そこで渋みからくる「えぐみ」のようなネガティブな要素を感じたら、それを取り除くために焙煎の温度を少し上げて調整していく、という流れです。焙煎はスチームコンベクションオーブン(いわゆるスチコン、メーカーは星咲)。一回に入れられるのは約三キロです。
ママノ 江沢:
なるほど、繊細な調整を繰り返しているんですね。目指している味わいの方向性はありますか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
「卸で使ってもらいやすい」ということを考えています。なので、カカオの個性はしっかりと感じられるけれど、尖りすぎてはいない、というバランスの取れた味わいを意識していますね。
ママノ 江沢:
焙煎後の皮むき(ウィノイング)の工程では、何か工夫はされていますか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
殻は「カカオマシン(ウィノワー)」で飛ばしたあと、殻がくっついている豆などは手作業でしっかり手選別します。地味ですが、ここが味に効きます。
ママノ江沢:
板チョコではなく、薄くて割りやすい形にしているのは?
LIVES CHOCOLATE駒井:
食べ比べると、薄い方が「おいしい」と感じるんです。だから、薄く伸ばして成形しています。割って食べやすいのも良いところですね。
主戦場は「卸売」。お菓子になることで広がるカカオの可能性
ママノ 江沢:
LIVES CHOCOLATEは、はじめからイベントやオンラインショップの直接販売だけでなく、小売店やケーキ屋などへの「卸売」をメインで考えているのがユニークですよね。
LIVES CHOCOLATE 駒井:
はい、独立当初から卸売をメインにやっていきたいと考えていました。BEAN TO BARの板チョコとして販売するだけでは、どうしてもカカオの消費量に限界があると感じていて。もっと多くの方に、お菓子という形で日常的に私たちのチョコレートを味わってほしい、そうすることでカカオの消費量を増やしていきたいんです。
ママノ江沢:
産地の使い分けについても聞かせてください。
LIVES CHOCOLATE駒井:
用途で選びます。例えばウガンダは発酵が7日で、クリームと合わせるとキャラメルのような出方になります。ウガンダの企業には1ヶ月半滞在をさせてもらったこともあるので、思い入れもあります。一方エクアドルは、ミルクとの相性がとても良いと評判です。お菓子側のレシピに合わせて使い分けています。エクアドルの豆で作ったフロランタンも、香りが生きていました。
物理好きのエンジニアがチョコレートの世界へ。原点は「児童労働」への想い
ママノ 江沢:
駒井さんはもともと農機具メーカーのエンジニアだったとのことですがが、なぜチョコレートの世界に?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
大学4年生の時、テレビ番組で「2025年にはチョコレートがなくなるかもしれない」という特集を見たのが最初のきっかけです。衝撃を受けて色々と調べていくうちに、生産国の児童労働やフェアトレードの問題を知り、正当な対価を得られないために農家の方がカカオ栽培をやめてしまうという厳しい現状があることを知りました。
ママノ 江沢:
それが原体験になっているんですね。
LIVES CHOCOLATE 駒井:
はい。もともと物理が大好きで、ものづくりが好きだったので大学院まで機械工学を学んでいたのですが、その知識を活かして将来カカオに関わる仕事をするにはどうすればいいかと考え、農機具メーカーに就職しました 。その後、『オキナワカカオ』で5年間製造から販売まであらゆる経験を積み、独立に至りました。

ブランド名「LIVES」とロゴに込めた、平和への願い
ママノ 江沢:
「LIVES」というブランド名には、どのような想いが込められているのでしょうか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
「活気がある」という意味の”live”と、「LIFE(人生)」の複数形”lives”をかけています。作り手から、チョコレートを加工してくださる方、そして食べてくださるお客様まで、多くの人の人生に関わり合うようなチョコレートでありたい、という想いを込めました。
ママノ 江沢:
鳥が描かれたロゴも非常に印象的です。どんな意味がありますか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
このロゴは、以前からお世話になっていたデザイナーさんにお願いしました。私のブランドに込めた想いを伝えただけで、具体的なデザイン案は一切出していませんが、思いを汲み取ってデザインにしてくれました。このロゴには、たくさんの意味が込められています。
・世界へ飛び立つ鳥: 沖縄という場所から、やがては世界へ羽ばたいていきたいといという想い
・鳩=平和の象徴
・暗闇から光へ: ロゴの鳥の色はこげ茶色なのですが、これはフェアトレードがまだ完全には実現されていないカカオの現状を表しています。そこから明るい未来へ向かって飛んでいく、というストーリーです。
・手を取り合うハート: このロゴを反転させて二つ組み合わせると、人々が手を取り合っているハートの形になるんです。将来的には、みんなが手を取り合って生きていけるような社会を目指したい、という願いを表現してくれています 。
ママノ 江沢:
いいですね!今後の展望について教えてください。
LIVES CHOCOLATE 駒井:
まずは沖縄県内で、ブランドの認知度をしっかりと高めていきたいです 。そして、その先には県外、さらには世界へと広げていきたいと考えています。

「作っている時が一番楽しい」
ママノ 江沢:
最後に、駒井さんにとってチョコレート作りで一番楽しいと感じる瞬間、そして一番嬉しいと感じる瞬間はどんな時ですか?
LIVES CHOCOLATE 駒井:
焙煎の温度や時間など、色々な変数を変えながら、まるで実験のようにチョコレートの味わいを追求している時が一番楽しいですね。もともと研究が好きなんです。そして何より、そうして作ったチョコレートをお客様に食べてもらって、「おいしい」と言っていただける瞬間が、一番嬉しいです。エクアドルの農園にも行きたいです。
ママノ 江沢:
駒井さん、ありがとうございました!
沖縄や沖縄以外でもお菓子作りにLIVES CHOCOLATEのビーントゥバーチョコレートを使いたい方はぜひ連絡してみてください!→ https://liveschocolate.stores.jp/about

