
『みんなで育てるカカオの森プロジェクト』オンライン交流会を開催しました。25年7月
2025年7月下旬、『みんなで育てるカカオの森プロジェクト』の一環として、日本とエクアドルをオンラインでつなぎ、日本の支援企業とエクアドルの若手農家の参加による交流会を実施しました。
プロジェクトオーナーである横浜のチョコレートブランド「バニラビーンズ」からは11名が参加。エクアドル側では、支援農家向けのワークショップ終了後、家が近い8名ほどの農家が交流会に参加しました。
成長を続けるチャクラのカカオたち
2024年に植えたカカオの苗は、ロナルさんの農園で順調に育っており、すでに1.5〜2メートルまで成長した木も見られました。収穫は早ければあと1年半ほど。約300本の苗が4メートル間隔で植えられ、チャクラの中でたくましく根を張っています。
カカオの成長にあわせて必要な技術も変化するため、交流会までに現地で実施されたワークショップでは「病害虫対策」「剪定」など技術の習得に励んでいました。
ワークショップで学んだこと・農家の声
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Evelynさん:「害虫と病気の見分け方、剪定の大切さ、共同作業の重要性を学べて実践的でした」
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Ladyさん:「何度もワークショップに参加して、剪定の理論と実践、植え替えの知識が深まりました」
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Keylaさん:「チャクラは食と文化の宝庫。仲間と共に働くことで、祖先からの知恵を次世代につなげていきたい」
日々の生活とチャクラのある暮らし
農家の1日に関する質問にはロナルさんのお父さんがこのように答えてくれました。
「農家の一日は早く、朝3〜4時に起床してグアユサ茶を飲むところから始まります。午前はチャクラで作業、昼食にチチャ(発酵飲料)を飲みながら休憩し、午後も再び畑へ行き作業を行います。」
チャクラとカカオ栽培の歴史
チャクラは、森の生態系を模倣したアグロフォレストリーです。高木のバナナや果樹が日差しを遮り、その下でカカオを育てます。
土地改革をきっかけにキチュア族の家族に40-50ヘクタールの土地が分配され、現在のような定住型の複雑なアグロフォレストリーシステム(チャクラ)が形成されました。ただし、チャクラの起源はさらに古く、定住以前から森の中でノマド的に暮らしていた頃にすでにその原型が存在していたとも言われています。
この地域の「カカオ栽培の歴史」についても日本のメンバーから質問がありました。
エクアドルナポ県のキチュア族によるカカオ栽培は、数十年前は主に自家消費用として5〜6本のみ育てていた家庭が多く、カカオ栽培プロジェクトが展開されたことで今では1ヘクタールあたり300-500本程度の栽培へと拡大しました。
Wiñak組合では「ナショナル・フィノ・デ・アロマ」種を有機で栽培しており、その香味は世界でも高く評価されています。
交流会での質疑応答・日本側からの声
日本の参加者が農家に質問を投げかけたところ、次のような声が寄せられました。
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自分たちのカカオから作った完成品のボンボンやバーなどを食べてみたい
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チョコレートドリンクも飲んでみたい
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雨よけ用のしっかりしたポンチョがあると嬉しい
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疲れにくい剪定鋏などがあれば活用してみたい
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山道を歩きやすい足袋があると便利
気候変動とチャクラの可能性
気候変動に関する影響についても議論が交わされました。
エクアドルでは近年、気候の季節感が崩れ、果物や食用昆虫の収穫時期がずれたり、11月に極端な暑さと乾燥が見られたりと、気候変動の影響が顕著です。
しかし、チャクラのような伝統的なアグロフォレストリーシステムは、直射日光や高温を和らげ、気候変動の影響を軽減できる可能性があるとされています。
参加者同士のつながりと今後の希望
若手農家たちは「他地域のチャクラを訪問して学びたい」「カカオの発酵・乾燥・加工・商業化までの流れを知りたい」といった声を上げてくれました。
日本とエクアドルの双方が、単なる生産と販売を超えて、文化、技術、そして人と人のつながりを育むこのプロジェクト。今後も協力し合いながら、カカオと森の未来をともに育てていきます。
プロジェクトについて詳しく知りたい方はこちら:
https://www.vanillabeans.yokohama/view/page/project_cacaofarm