【スピーチ全文掲載】国連FAO主催ウェビナーで発表した『サプライチェーンにおける農家の持続可能な農業実践をサポートする活動』について

【スピーチ全文掲載】国連FAO主催ウェビナーで発表した『サプライチェーンにおける農家の持続可能な農業実践をサポートする活動』について

当日の動画はこちらからご覧いただけます。

私たちの会社ママノチョコレートは、一貫してカカオを中心にエクアドルアマゾンチャクラの作物を扱っている会社です。

 今日は、サプライチェーンにおける農家のサポートというタイトルで発表をさせていただきます。

発表の前に、1つ私たちの立場をお伝えしたいと思います。

このイベントではママノからのサポートについて話をしますが、私たちは、農家とサプライチェーンの関係を、支援する側と支援される側という視点で見てはいません。

私たち自身が農家や組合からたくさんの環境的な恩恵や、魅力的な食材の提供を受けています。ですので農家や組合は、地域課題、そして地球規模の課題解決に立ち向かうパートナーだと考えています。

 

まず簡単にママノについてご紹介します。

ママノは、2013年に創業した会社です。エクアドルのアマゾンに1名代表がおり、現地農家や組合と日々連携を取りながら事業を行っています。東京では、チャクラの原材料専門のチョコレート店を運営しながら、チャクラ原料の卸事業をショコラトリーやパティスリー向けに行っています。

 

ですので、チャクラ作物の原料開発、原料の品質改善から、輸入、卸、店舗運営に至るまでサプライチェーンの全てを小さい規模ながら行っている会社としての取り組みを本日は共有させていただきます

世界農業遺産に認定されたアマゾンチャクラに魅了された一人として、またチャクラシステムが地域的な課題を解決するのみならず、地球規模の複合的な環境的、社会的課題を解決するための助けになると信じて事業を行っているものとして、これを聞いていらっしゃるみなさんの参考になることを願っています。

次にママノの事業活動の概要を手短にご紹介します。

 

エクアドルアマゾンでは、カカオなどのアマゾンチャクラで育った商品の仕入れ、品質の改善、新たな商品の開発、野生種の保全などを行っています。

 

また、チャクラを支援する立場として、チャクラコーポレーションというチャクラロゴの認証を付与してチャクラを広める活動をしている機関の倫理委員会のメンバーとしても活動をしています。その他、日々チャクラに関わる研究者や国際機関との連携を深めております。

 

日本においてはチョコレート店を運営して、同時に卸事業も行いながら、チャクラの価値を普及するためのオンラインセミナーを積極的に行ったり、チャクラ原材料の公式輸入企業としてチャクラロゴの普及にも努めています。およそ11年間の活動でスタートはカカオからでしたが、現在は様々なチャクラで育った作物を商品して紹介しています。



次に、取扱商品を紹介します。

 こちらでご覧いただいている通り、現在は高品質のアリバカカオ、カカオの野生種、ナポグアユサ茶、エクアドルシナモン、レモングラス、バニラオドラータ、ハリナシバチの蜂蜜、マカンボ、ジャングルピーナッツ、ファインロブスタ珈琲を商品として扱っています。

 全ての商品はチャクラで栽培されているか、チャクラや原生林を活用しており、環境的、社会的、経済的に持続可能性の極めて高い商品となっています。

 

こちらのスライドでは、どんなチャクラ原材料を扱っているかを写真で表しています。

チャクラの意味とその価値を伝えていくことを顧客向けに行いながら、広い意味でのフェアトレード、森林伐採フリー、オーガニック、生物多様性の保全、といった価値も、商品のおいしさとともに伝えるようにしています。



次に、サプライチェーン企業としての活動の話をしていきたいと思います。

ここでは、チャクラ商品の中心であるカカオについての取り組みをご紹介します。

 活動内容は大きく2つに分けられます。1つはカカオの仕入れ段階で行う活動と、もう一つはカカオの仕入れ以外に付加価値を上げていく活動です。

 

1つ目は、カカオの仕入れについてです。

重要なことは2つあり、1つは農家が十分に意欲を持って高い品質のカカオをチャクラシステムで栽培してくれるように高い価格でカカオ豆を購入することです。カカオ価格は組合と相談しながら決定をしていますが、市場と他の国際企業の価格を確認しながら、最も高い価格で購入できるように調整をしています。高い価格に設定すると、他の企業や仲買人も当社の買値を参考にしますので、それで価格の上昇圧力を働かせることができるという意味で、ポジティブな効果があります。

 

2つ目に前払いでのファイナンスサポートです。

パートナーであるウィニャック組合はおよそ260世帯の小規模家族農家が加盟している先住民農業組合です。

カカオの収穫、集荷が始まる段階で、組合が農家からカカオを購入するための資金を、あらかじめ提供することが重要です。

 

組合側がカカオを農家から購入し現金でその場で支払いをできることが、農家と組合の信頼関係を強めることに繋がって、組合が農家に高品質のカカオを提供するモチベーションとなります。この前払いは当社だけではなく、複数の良い哲学を持つ国際企業は同様に実践して、組合をサポートしています。

 

日本でカカオ豆を販売する時には高品質なプレミアムカカオとしてお客さんに届けることになりますので、その時にもう一つ重要なことは透明性の確保です。

 

トレーサビリティシステムではなく、マニュアルではありますが透明性を確保するために収穫日、農家名、集荷量など記入されたデータを組合から共有してもらい、管理しています。ウェブに公開をしているわけではないのですが、いつ、誰が、どこで、どのくらい、いくらで、という情報を常に把握していくことは、組合と当社の信頼、そして当社と顧客の信頼を向上していく上で重要な要素になると考えて実践しています。

 

次に、商品価値の向上についての取り組みです。

 これは大きく2つの活動があります。

1つ目に未利用野生種カカオの再発見と活用です。 

この地域は世界的に、カカオ発祥の地の一つと認識されています。

 

チャクラで栽培されているカカオ以外にも、珍しい種類のカカオが原生林に生息していて活用されていない地域があります。

 

これは様々なコミュニティの方々と話して情報を得ながら現地に向かい、実際に食べてみることで希少性だけでなく、どの程度の商品価値があるかどうかを知ることができます。

 

現在、100年を越えるような古いカカオの木が生息している地域でラベンダーやバラのような香りのするカカオは商用化し、継続的に収穫量を増やしていく取り組みを行っています。アマゾンの方は市場からのアクセスが悪く、特に収入源が少ないコミュニティが多いため、収入源を増やせるように取り組みを行っています。

 

2つ目は集荷方法、発酵方法、選別方法の改善です。

基本的にここでの目的は、より高い付加価値価値を持つカカオ豆を作ること、です。

その手法として、カカオの集荷、発酵、乾燥、選別などの工程で様々な工夫をすることができます。

 

例えば、カカオの集荷は農家に前持って日程を伝え、集荷の前日に収穫をして指定の袋に入れて組合の集荷日に待機をしてもらいます。これは、カカオが収穫後日数が経過しすぎたり、また集荷日が農家ごとにバラバラだと発酵開始のタイミングがズレてしまい一定の品質で美味しいカカオを作ることができなくなってしまうためです。

 

他には、集荷するコミュニティごとにカカオの種類に若干の違いあるため、コミュニティを指定して集荷をしてもらうことでカカオの風味の特徴を引き出すといった取り組みもテストとして行っています。

 

このような取り組みをすることで、より付加価値の高い商品を作ることができるようになるだけでなく、農家もどのカカオが市場で高い価格で買ってもらえるのか知ることができ、自身の栽培に生かすことができるようになります。

 

最終的なカカオ豆の風味の好みはお客さんによって異なります。風味の評価や理想状態を組合に伝え、組合は改善できるポイントを日本市場向けに調整することで、カカオ豆が高い評価を受け、その価値を農家に収入アップという形で、還元することができるようになります。

 

まとめると、サプライチェーンの役割として、顧客とコミュニケーションをとり組合や農家にフィードバックをし、より高い価値を持つチャクラの商品を、農家とともに生み出すことが大切だと考え実践しています。

 

これはまとめると、価値向上のスパイラルという図で捉えることができます。この付加価値向上のスパイラルをより進めることが、持続可能な農業をサポートする上でサプライチェーンが果たす1つの大きな役割だと思います。

 

次に顧客へのチャクラシステムの価値伝達方法についてです。これは2つございます。1つはオンラインセミナーで、もう1つはチャクラ認証とチャクラロゴを通じたコミュニケーションです。

 

まさにFAOがこうして世界農業遺産の知恵を集めてウェビナーを実践しているように、当社でもエクアドルのアマゾンの農家や研究者と繋いだセミナーを頻繁に実施することで、一般のお客さんや法人顧客にチャクラの価値を共有しています。

 

例えば、チャクラシステムの炭素蓄積量のセミナー、気候変動とチョコレートの関係性について、チャクラに生息する動物について、グアユサ茶の飲み方の紹介、カカオの栽培方法や発酵乾燥方法について、ハリなしバチの養蜂の方法や、健康効果の研究結果を紹介するセミナーなど、セミナー内容は多岐に渡ります。

 

セミナーには、FAO、WWF、研究者、大学、養蜂家、農家、大使館、チャクラコーポレーション、GIZ、JICAなど、様々な主体に登場していただくことで、チャクラシステムの価値を伝達するとともに、チャクラシステムの輪を広げる取り組みをしています。

 ママノのyoutubeがございますので、よかったらYouTubeご覧ください。

 

次にチャクラコーポレーションの活動についてです。

チャクラコーポレーションは、チャクラの価値を広めること、チャクラを通じて農家の生計を向上させることを目的としていまして、チャクラシステムで栽培された作物や商品にチャクラ認証を付与する機関です。 

フェアトレード認証やレインフォレストアライアンス認証のようなものだとご認識いただければと思います。

 

ママノは現地の倫理委員会の一員として、新たにチャクラ認証登録を申請された組合や企業の審査に参加をしています。また、2023年から正式に始まった認証機関のため、制度設計にも携わりながら、企業や組合がよりチャクラ認証を利用したくなるように提案を続けています。

 

ママノ自体がチャクラ認証を受けた最初のパイロット企業として、より良い認証制度になるように様々な提案やフィードバックを行っているんですが、日本国内においては、チャクラ認証を受けた作物の正式な輸入企業として、日本国内でチャクラ食材を使った商品を販売される企業向けにチャクラ認証の付与を代理で行っています。

 

2024年1月から正式にチャクラロゴの認証の申請受付を開始し、現在は7社がチャクラ認証商品の販売を行っています。今後も、チャクラの価値を伝え、チャクラ認証制度の普及を促進していく予定です。

こちらが、チャクラロゴの活用事例です。パッケージにつけたり、インスタで共有していただいたり、店頭のPOPで活用していただくなど、マニュアルに沿って活用していただいています。



最後に、とても先進的なプロジェクトをご紹介します。みんなで育てるカカオの森プロジェクト、というもので、こちらは、日本の横浜を中心に他店舗を展開するチョコレートブランドであるバニラビーンズがプロジェクトオーナーとして農家を支援するプロジェクトです。で、当社はこのプロジェクトのコーディネイトを組合とともに担当しています。 

農家の生計向上やチャクラシステムを通じた気候変動緩和を目的としており、年間約27000ドルの予算で3年間の継続的なプロジェクトとなります。今年の3月からスタートしました。

 

プロジェクト内容は、まず初年度3,000本のカカオ苗木をプレゼントすることで、10名のまだ農業経験の浅いキチュア族の農家が初めてのチャクラ農園を持つサポートをします。

 

苗木は購入するのではなく、ウィニャック組合の優秀な農家の健康なアリバ種のカカオの種から育てて配布します。また農業キットの配布、継続的なチャクラ栽培方法のワークショップ、モニタリングを通じて、農家が独立して生計を立てることをサポートする包括的なプロジェクトです。

 

そして、ここで栽培されたカカオは、チョコレートブランドバニラビーンズの店舗やオンラインショップでチョコレートとして販売されることを目指しています。ゼロから農家を支援する形でのFARM to BARの取り組みは先進的で、尚且つ民間資金のみで行われる持続可能な関係性を目指すプロジェクト、ですので、ぜひ応援していただきたいと思います。

 

プロジェクトは3月から動き始めており、これまでの1ヶ月間の進捗を少しだけご紹介します。

 

まず写真の左上から、まずはウィニャック組合のポストハーベストセンターに苗床を作りました。そして農家から健康なカカオを集めて(もちろん購入して)苗ポットに種を植えて今は700ポッドほど発芽を待っている状況です。

この後4000ポッドほど苗木の準備をしまして、最終的には芽が出て強く育った苗木3,000本を初年度は配布をする予定です。

 

以上、ここまでがママノチョコレートのプレゼンテーションとさせていただきます。最後に一言メッセージを伝えさせてください。

 

気候変動の影響や、熱帯雨林そして生物多様性の損失による影響は農家にとっても地球の全ての⁨⁩人にとっても甚大なものとなります。ただし、その影響は貧しい人、脆弱な地域に不平等に降りかかります。貧しい人はより貧しく、脆弱な地域はより深刻なダメージを負うことになります。

 

今すぐに、企業も、そしてチョコレートを購入するお客さんまでも、大きく、行動を変える必要があります。ですが、できるならその変革はワクワクしながら楽しく行えた方がいいと思っています。

 

その方法の一つとして、持続可能な農業を行っている農家や地域を、企業やお客さんがサポートして、そして美味しいチョコレートを食べることができるようなサプライチェーンを構築していけたらいいなと思っています。

 

世界中の皆さんと一緒に、知恵を集めて、より良い社会を作っていければと思います。ご覧いただきありがとうございました。

 

2024/4/26 

ママノチョコレート

株式会社コータロー

江澤孝太朗